「オーバーホール」は、アンティーク時計を持つ・調べていると必ず出てくる言葉ですが、アンティーク時計はもちろん、現在販売されている新しい機械式時計にとっても無縁ではない言葉です。
車に定期的な車検が必要なように、小さな歯車やネジ・金属部品で組み上げられている時計も、車同様のメンテナンスが必要になります。
このメンテナンスのことをオーバーホールと呼びます。
オーバーホールは何をするの?
オーバーホールでは、基本的には時計の部品をバラバラにして、それを綺麗にして必要な箇所に注油をし、再び元の状態に組み上げます。
その際に、部品の磨耗箇所の確認・劣化している部品の交換などを行い、また次のメンテナンスまでの間、時計がちゃんと正しい時間を刻むように調整や矯正などを行います。
これを定期的に行わないと、油が切れ部品の磨耗を起こし、部品の劣化そして時計が動かなくなることにもなります。
オーバーホールを受ける推奨期間については様々で、時計自体のコンディションによっても変わります。
ただ特に1960年頃までの古いアンティーク時計は、3年をめどにオーバーホールを受けていただくほうが良いでしょう。
20年・30年ほど経った時計でも、できれば3年をめどに受けていただくことをお勧めいたします。
ただし、時計の中に水が入ってしまった場合や、錆びなどが目視できる場合は、できるだけ早くオーバーホールを受けるようにしてください。
オーバーホールの値段は?
1つの時計によって分解・洗浄・注油・乾燥・組み立て・調整などの行程があり、行程によっては数日間様子を見るものもあれば、1日に1度しか作業できない内容もありますので、工程としては必ず何日もかかることになります。
時計によっては何度も細かな調整や組み立てを何度も行うことがあり、時計の状態によっては技術や経験を要する作業内容が求められますので、どんな時計でも作業には時間と手間がかかります。
特に古い時計の修理の場合、古い時計の修理を数多く扱っている経験や技術・知識面が修理の成果に非常に大きく関係します。
これらの作業に対しての対価が、オーバーホールという費用・技術料になります。
オーバーホールはあくまで時計のメンテナンス、修理とは別になりますので、時計の状態・機械の種類によっては、部品の交換や製作が必要になれば料金が高くなることもあります。
オーバーホールの値段は、お店や技術者によって様々ですが、修理をする側はその時計を修理する際のリスクを値段に含めなければなりませんので、アンティークや舶来物ブランド・高級ブランド、希少で高価な時計・複雑な機構を備えた時計ほど高くなります。
また一般的に、あまりに料金が安い場合は、普通に考えれば料金が安い分、修理をする数をこなさなければならず、作業時間を短くせざるを得ないわけですから、それぞれの時計にかけられる時間が短くなる・技術の品質が低くなるかもしれないというリスクがあるという点は否めません。
時計の修理にもいろいろな方法があり、工程の省略や本来使いわけるべきものを一緒にしてしまったりという修理をされる方もいますので、ひとくちに「オーバーホール」といっても、内容は同じではありません。
大切な時計を修理されるなら、あまり安すぎるお店は敬遠すべきです。
また高い技術を持つ・信頼できるお店や技術者の元には、一度依頼した方が繰り返し依頼をしますので、比較的常時忙しいもので、それに比例して料金もやや高くなる傾向があります。
オーバーホールに要する期間については、時計自体に大きな問題が無ければ、2週間から1ヶ月ほどです。
良い技術者を見つけるには?
普通の方では、技術者の良し悪しの判断できないものです。
修理を依頼した時計がちゃんと動いていても、その修理内容というのは様々です。
アンティーク時計の修理を依頼される場合は、修理に特に経験や技術が求められますので、アンティーク時計の修理を得意とする技術者に依頼するのが一番良い選択肢です。
信頼できるお店から購入した時計であれば、そのお店でのオーバーホール・修理を依頼するのが一番です。
インターネットオークションなどで格安オーバーホールを引き受けている方もいらっしゃいますが、格安であるがうえに、処理できる作業量・数を超えて仕事を受けているケース、独学で間違った修理・オーバーホールをしていることもあり、中身が見えないものであるだけに信頼しがたい一面はあります。
またアンティーク時計の場合は特に、技術者によって結果に差が出ることが良くあります。良い技術者を見つけたら、できるだけその方にお願いし続けることをお勧めします。
オーバーホールをしないと時計が二度と使えなくなる?
この表現はオーバーホールを行っているお店などのホームページで書かれていることですが、一面では正しくまたもう一面では正しくないこともあります。
オーバーホールをしないでおくと、油切れや汚れで正しく動かなくなりますが、この時点では十分にオーバーホールで間に合います。
ただ時計というのは良く出来た機械で、油切れが起こってもしばらくは問題無く動き続ける、場合によっては数年でも問題なく動き続ける場合があります。
ただしこのような使い方を続けていくと、金属部品は本当にわずかづつですが摩耗していきます。磨耗してしまった部品は代替部品に差し替えるか、新しく作り出すしかなくなります。このような長い期間で考えた場合は、動かなくなってしまう可能性というのはあります。
部品が磨耗するまでに、止まり以外にも症状が表れることが一般的ですので、ケースバイケースということもあり一概には言えませんが、二度と使えなくなることもあればそうでないことも多分にあるということです。
またずっと使わずに置いておいても、油切れ・蒸発などが起こり同じような現象が起こります。またそれに合わせて、金属である部品に錆びが出てくることもあり、錆が出てしまった場合は、年数が長くなればなるほど、侵食が深くなることがあります。
錆びの場合も部品の摩耗と同じく深刻で、表面上はもちろんですが部品の内部まで侵食することがあるため、場合によっては部品自体が使えなくなることがあります。
「オーバーホールをしないと二度と時計が使えなくなる」かというと、一般的な話としては、オーバーホール期間がお勧めしている期間の3年を超えて、4年・5年になったからといってすぐに問題があるかというとそうでない場合もあり、使用する頻度や機械自体の状態・保存状態もあり、一概には言えません。
ただ「動かなくなるリスクがある」ということは覚えておいてください。また期間が長くなればなるほどリスクも高くなることは知っておいてください。