これは「動いている時計」を修理に出し、見積もりだけで修理をしなかった場合によく起こることです。
原因は見積もりをしたお店側にもありますが、お客様の側にもあります。
まず修理のお見積もりをする場合、お店によっては外観や検定器による測定や症状などによる診断で、機械に影響を及ぼさない範囲でお見積りをするお店と、機械をさわってわかる範囲までお見積りをするお店の2つがあります。
前者では機械に影響を及ぼさない範囲での確認になりますので、基本的にはお預かりをした時の状態と変わらない状態でお返しができることになりますが、後者では、少なからず機械を触ることになりますので、その程度によって、お預かりをした時の状態とは変わってしまいます。
部品を触ることで、油の拡散や部品やネジの締め具合、汚れや錆びなどが取り除かれるなど、細かい部分での違いが必ず出ます。
これらの細かい部分での違いが、時計の動作に影響を与えます。そしてこれを矯正して直すことは、料金をいただいて行う作業になります。
機械を触ってお見積りをする場合、お見積り後にお客様が修理をしないと決めた場合には、基本的には元通りに組み立ててお客様の元へお返しすることになります。
ただ「元通り」といっても、機械がちゃんと動くようにして戻すという意味ではありません。
動いていた時計の場合は、基本的には動作確認は行いますが、あくまで「配列通りに組み上げる」ことまでが、ご返却の場合の作業になります。
そのため、「問題無く動く・誤差無く動く」というところまで、完全に確認してご返却をするわけではありません。
理由は簡単で、「問題無く動く・誤差無く動く」程度まで時計を組み上げるということは、オーバーホールなど料金をいただいて行う作業になるからです。
時計修理のお見積りは、一般的には無料もしくは低価格、修理をする場合には無料になるケースがほとんどです。
お見積りのみで修理をしない場合は、「問題無く動く・誤差無く動く」というお金をいただいてする作業まではできません。
修理のご依頼をされるお客様と、見積もりを受けたお店側でよく問題になることが多いことですが、修理を依頼されるお客様の側でも、見積もりには時間と手間がかかること、「正しく動く」ように戻すのは料金を払う作業だということの理解が必要です。
またお店の側でも、どのように見積もりをするのか、どのようなリスクがあるのかをお客様にお伝えしなければならないことです。
特に「動いている時計」を修理に出す場合には、この点について理解をしたうえで、どのような作業になるのか確認をしていただくことを強くお勧めいたします。