現在地: Home よくあるお問い合わせ 保守に関するお問い合わせ オーバーホールを受けると誤差は良くなる?

作業を受けるお店と、依頼するお客様の間で良く問題になることが、この誤差の問題です。

まず答えから言えば、オーバーホールや修理をしたとしても、現在の誤差より良くなるという保証はありません。

誤差がよくなる可能性が高いとはいえるものの、すべての時計に当てはまるものではないからです。

例え、依頼するときに誤差が1分以内のものであったとしても、仕上げてみると誤差が広がることも無いことではありません。

 

その理由は、簡単に言ってしまえば、すべては時計・機械の状態次第であるからです。

例え誤差が1分以内の時計であったとしても、機械自体の状態が悪い、違う部品が使われている等があれば、その問題部分を直していくと、より誤差が広がってしまう状態になってしまうかもしれません。

よくある状態として、依頼されるお客様の側では、置いたままの状態、例えば寝かせたまま、もしくは立てたままの状態のでの誤差のみを言われることがありますが、時計を他の角度や状態にしてみた時に、止まりが出たり、より大きな誤差が出ることがあります。

機械の状態を確認すると、しっかりと振るべき部分がほとんど角度がでていない・弱弱しく動いているだけという状態、角度を変えれば、止まりそうになりながらも、なんとか動いている状態ということがよくあります。

これは時計自体に問題があるためで、誤差が少なく動いているのは、問題がある部分の影響を受けずに動いている状態で計測されていることがあります。

 

時計は使われることを考えて仕上げられますので、できるだけどの角度でも誤差が少なくなるように、なるべく使用する状態を考えて誤差が均一になるようにと仕上げられるものです。

一方の角度で誤差を詰めると、別の角度では誤差が広がるというような、まるでふらふらとしているやじろべえを操るような状態の中で、角度の違いによっての誤差があまり出ないように仕上げていきます。

時には全体としての誤差自体は広がるものの、角度による誤差の違いを少なくすることを優先することもあります。

そのため、オークションなどで使用されている「平置き」という状態で、1分の誤差などと言われているものは、正しい誤差の伝え方ではなく、仕上げる目安にはなりません。

時計によっては、部品同士が擦れてしまう・寸足らず等、いろいろな原因が影響し、誤差を縮めることができないものがあります。

 

また元々の正しい部品ではないものに交換されている場合や、無理な修理がなされていることで、その部分を修理や矯正してあげることで、時計としては当たり前の状態になる・正しい状態にはなるものの、状態が変わってしまうために誤差が出てしまうことがあります。

修理する観点から言えば、間違っている部分はできるだけ正しい形にしてあげる、できるだけ長く使っていただける状態にするのが当たり前ですから、それらを直した上で誤差をどこまで詰められるかというところになります。

誤差を少なくするために、部品が劣化・摩耗しやすい状態を放置したり、間違った状態を放置するのは、そもそも本末転倒というものです。

 

修理する側としては、できるだけ誤差を詰めるように努めるものの、正しい形にしてあげることが一番大切なことで、そのうえで誤差をできるだけ詰めることになります。

このような理由から、オーバーホールをすれば、必ずしも誤差が良くなるというわけではありません。

修理やオーバーホールをすれば、基本的には誤差は縮まるものではありますが、絶対ではない・時計の状態によることは、お客様の側でも知っておくべきです。

作業を依頼する場合は、誤差を気にされる方はどのようになりそうかを聞いておくべきで、誤差を容認できない・誤差が出ることを楽しめないようであれば、古い時計は持つべきではありません。

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